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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页

青空文庫

手前主人などは、その鵜呑みの方でござりましたから、腹の中をくるくる廻って、時々咽喉へつかえると、癪持同然。そのたんびに目を白ッ黒いたして悩みましてござりまする。」

「いかなこッても、ほほほほ。」

「へい、いえ、それでも貴女様、何しろこの騒ぎをいたそうという前兆でござりまするから、風説をほんとうにしましたぐらいは、何でもござりません。

そうかと思う、兆を見せて下すった、天道様の思召じゃ、まんざら、熱海を海になすって、八兵衛鯛、理右衛門鰈、鉄蔵鰒、正助章魚なんぞに、こちとらを遊ばそうというわけでもあるまい。

してみれば、この茄子は、災難よけのお守護だ、と細かに刻んで、家中持っておりました処もござります。

それがと申すと、はじめは瑞祥だと申しましたのを、娘が奉納して帰りました時分から、誰いうとなく、この春は大地震がある、大地震があるといい出しまして、手前なんざ、一日に五六たび、違った人の口から聞きましたのがはじまりでございまして。

ええ、最初、やはりあの竹でござりました。番頭さん、この頃に大地震がありますッてね、と帳場へ来て申しますから、何を馬鹿な、と気にも留めませんで、それから二階の六番へ。