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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页

青空文庫

その癖朝の内から蒼い玻璃見たような晴天で、昨日も一昨日も、総六が崖の上から、十国峠の上に三日続けて見ましたという、つくね芋の形をした重い雲が影もないので、せめてもの心やりにしました処、暮六ツ前から、どんよりいたしましたのが、日が暮れると、あの朧、風が小留んだと思いますと、また少し寒さが戻りまして、変に暖くなる、と気のせいでござりましょうか。厭にあかりが薄暗くなったでござります。滅入って息が詰りそうで、ぼんやり、手前などは、畳を見詰めておりました。

その畳の目が貴女様。

むくむくと持上って、※と消えて、下の根太板が、凸凹になったと思うと、きゃッという声がして、がらがら轟、ぐわッと、早や、耳が潰れて、四ン這いの例の一件。

いや、何とも早や異変なことで。」

調子づいて語り果てた、番頭ふと心着いて、

「へへへへへ。」

何ともつかず笑ったが、大分夜が更けたという顔色。

「しかし、何事もなくッて可い塩梅だったのね。」

夫人は、さして退屈らしくも見えなかった。

「へいへい、お庇さまで、まずこれで、今夜から枕を高う寐られまする。へい、ざっと事済。

こうまた気が揃ったように大地震々々と申しましては、何事かございませんでは、無事に果てますものではないでござります。