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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页

青空文庫

二十三

あの方が、皆揃ったかッていいました。」

「そうすると……」

二十三

「来るだけは不残来ました。誰々だって、そういいましたら、伊豆の伊八、四丁艪の甚太夫、鯰の勘七、縄抜の正太郎、飛乗の音吉、秋刀魚の竹蔵、むささびの三次、――あのこの人の声だったんです、私に奥様のことを教えましたのは、」

夫人はお鶴の記憶の可いのと、耳の敏い、利発さと、そのかくのごとき運命とに、ただ何となく慄然とした。

「それから、あの、」

小指を折って、

「吹雪の熊太、韋駄天弥助、書生の源、あの、太い声で、六尺坊の悪右衛門っていったんです。」

蔦屋の二階に仁王だちで、通へ礫なげに贓物をこかしていた。大道に腰を抜いたものの、魔神が荒るると見たというは、この入道の事なりけり。

「お待ち。」

と夫人が声をかける。裏階子を上る音、ただトントンと聞えて止む。

耳を澄まして、

「どうも、気がせいてならないけれど、このままでは案じられるねえ。

ああ、何なの、そうしてお前の帰るのを、そこで待っているのかい。」

「あらためて私の許を、皆にひきあわせて、おかみさんにするんですって。」

「おかみさんに、お、お前それが嬉いの。