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よっつのみやこ

四つの都

織田 作之助

「映画評論 第一巻四号」1944(昭和19)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,005 字 · 62 页

青空文庫

三三 町。

三四 名曲堂。

初枝「あら、蜂谷さん、お髭お剃りになったの?」

十吉「えゝ、まあね、おかしいでしょう?」

初枝「尾形さん、どうかなすったの? また喧嘩?」

清子「いゝえ、なんでもないの(十吉に)この間の傘お返しするわ」

十吉「いや、持っていた方が無難ですよ……髭を剃ってみた処で、たいした事ありませんよ、失敬!」

出て行く。

三三 町。

十吉、歌をうたいながら歩いて行く。福島少佐シベリヤ行の歌。

十吉「一日、二日は晴れたれど、三日、四日、五日は雨に風」

向うから、夜店出しが荷車を引っ張って来て、十吉が「雨に風」と歌ったとたん吃驚して引返す。

名曲堂の表まで来ると、葉子が表に立っていて、話しかける。

葉子「なんぜ戻って来やはったん?」

夜店出し「新聞記者のあの蜂谷さんにばったり会うたんや、あの人の顔見るときっと雨やさかいな」

葉子「えらい人に会わはってんなア」

夜店出し(小鳥籠が店の軒につるしてあるのを見て)「どないや、鳴いたか?」

葉子「鳴けへんわ。ここへつるしたら鳴くやろ思たけどあかんわ」

籠をもって店の中へはいる。

三四 名曲堂。

表に雨が降っている。

十吉がはいっている。十吉、棚を指す。

十吉「葉子ちゃん、そこにショパンの『二十四の前奏曲』