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やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页

青空文庫

『いや、分らぬ』

箕兵衛直胤は、首を振った。

『――一振ぐらい試したとて、そう易々、折紙は付けられん。過ちの功名ということもあるからの。今、見事に斬れたのは、おぬしの一念が斬ったので、刀が斬れたのではあるまい』

『ば、ばかな』

『今朝から、わしの作は、十幾振も試しておるのじゃ、それと互角には申されまいが、口惜しくば、猶、二刀三刀、数を重ねて、試してみよ』

『おお、幾らでも』

『門人――真雄の刀を取り寄せて、次の据物を斬らせてやらっしゃい』

『それには及ばぬ』

環は、自分の腰に横たえている刀の柄を打って、

『兄の作は、ここにもある』

『ムム、自身の差料か。猶よかろう。――して、据物には、何を置くか』

『何なりとも』

『よし』

直胤は、古兜の鉢金を、壇に据えさせた。

そして自身、起って来て云った。

『あの目録にも見える通り、わしの作でも、此品ではないが、他の鉢金を斬っておる、おぬし、口ほどならば、これが斬れぬことはあるまいが』

『…………』

何の! と環はそれを見つめた。

『どうじゃ、行るか』

『致します』

『然らば――』と、直胤は身を退いて、『拝見しよう。やらっしゃれ』

と云い放った。