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やまうらきよまろ
山浦清麿
吉川 英治
「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页
三
『はははは。そう三拍子揃ったのも、厄介かも知れぬ。何と申す者で』
『信濃の産で、山浦内蔵助、環ともいい、刀銘には、そのほか正行などとも彫っておるが』
『お手許に、作刀がござりましょう』
『ござる。見てやってください』
窪田清音は、立って、床脇から、彼の鍛った一振を取ってそれへ差出した。
鍛ちおろしの中身を一見して、二人は、交に、驚嘆した。殊に、加藤宅馬は、鑑刀の眼もきくし、愛刀家といわれていたが、これは、古刀の名だたる銘作と比較しても、遜色のない物とまで――口を極めて賞めた。
『そうかなあ』
窪田清音は、にやにや笑った。
彼自身も、刀には眼利と、人にゆるされておりながら、そう云うのだった。そして、欣しそうな容子がつつめなかった。
『一体、こんな名刀が、どうして、お宅の物置小屋などに、埋れているといっては失礼ですが、世間にも知られずに居るのですか』
二人は、数年前の、兵学の弟子だったが、今度の出府に、挨拶に来たものだった。
だが、今の一刀を見ると、もう他の話は忘れて、熱心に、膝をのり出した。
三
一片の紹介状を持って、山浦内蔵助が、ここの門を叩いたのは、もうすでに六、七年前になる。