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やまうらきよまろ
山浦清麿
吉川 英治
「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页
張板を立てて、襤褸を洗い張りしていたお次は、気の毒そうに、そっと寄って。
『どうしたの……どうなすったの……』
『かまわないでくれ。……おらあ、唯、自分が鈍に生れたのが恨めしい』
『又、叱られたんでしょう。ここが、怺えどころですよ。何んな職業だって、修業の道は辛いものと極っています』
その時、玄関の方で、
『頼もう。――山田浅右衛門の使の者でござるが』
と、厳めしい口のきき方をした使者の訪れが聞えて来た。
催促である。
お次が、出て行って、聞くと、
『註文の刀は、ぜひ年内に欲しいのでござる。――という次第は、鍛ち下ろしを戴いた翌日――いつも朝の未明でござるが、罪人の死体をお上より申しうけ、新刀試しをいたしておきたいと主人が仰っしゃる。――それには、初春にかかっては、何かと、困り申すので』
口上は、裏の方まで、よく聞えて来た。
清人は、威勢よく、涙の顔をこすって、仕事場へ這入って行った。
『師匠。……すみません。これから、自分の愚鈍へも鑢をかけて、猶、一生懸命にやりますから、どうか、もっと叱って下さいまし』
六
年暮に押迫った極月の二十七日頃。
小塚っ原は、霜柱で真っ白だった。