轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

「そんなはずはない。ぼくたちが夢を見ているのでなければ、ここはやっぱり洞窟の中なのだ。これもきっとパノラマふうの目くらましだよ。おそらく、天井に鏡が張りつめてあるのだ。それに映って、この谷の深さが倍に見えるのだ。いや、岩の作り方による錯覚で、何倍にも見えるのだ。星は豆電球かもしれない。それとも、鏡の面へどこかから投映しているのかもしれない」

影男は奇術師の性格を持っていたので、あくまで奇術ふうに解釈した。

ふたりはそこのくらやみにうずくまって、ぼうぜんとして、はるかの岩の裂けめを見上げていた。この不思議なけしきが、しばらく現実を忘れさせ、かれらを夢幻の境に誘った。私立探偵とか、警察官とかいうものは、なにかしら遠い昔の夢のように感じられた。

はるかの岩の裂けめが、徐々に明るくなっていた。またたく星が一つ一つ消えていった。そして、裂けめの空が、まず紫になり、エビ茶色になり、次にあざやかな朱色に染まった。夜が明けたのだ。朝日の光は断崖の上部までさしこみ、でこぼこの岩膚を、朱と紫のだんだらぞめにした。しかし、日の光は、この谷底までは届かなかった。はるかの上部を照らしているばかりであった。