轻松读懂日语经典作品
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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
やっぱり学校の掛け図で見たことのある西洋の天女のような(おとなのことばでいえば聖母のような)女の人であった。掛け図の絵の天女は、はだかの赤んぼうを抱いていたが、この天女は何も抱いていなかったので、そのやさしい両手をひろげて、きたない毛糸の服を着たさち子を、暖かく抱きよせてくれた。なんだか死んだおかあちゃんに抱かれているような気がした。
「さあ、これから天国へのぼるんだよ。今きみの抱かれている人が、これからきみのおかあさんになるんだ。きみはまったく生まれかわって、しあわせな子になれるんだよ」
こわい武人は、ヘリコプターの運転席について、機械を動かしながら、やさしい声でいった。そして、ゆらゆらと機体がゆらいだかと思うと、いつのまにか、ヘリコプターは地上をはなれていた。
青い空を、上へ上へとのぼっていくにつれて、目の下のけしきがおもしろくひろがっていった。森の社や農家がおもちゃのように小さくなり、広大な東京の市街が目の届くかぎりひろがっているのが見わたせるようになった。そして、海が……品川の海、東京湾、その向こうに太平洋。一方には富士山がまわりの山々をしたがえて、くっきりとそびえていた。