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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

「佐川さん、あなたがただの小説家でないことは、お書きになるものからもじゅうぶん想像されますし、わたしたちは、いくらかあなたのことを調べてもあるのです。ですから、秘密はお互いさまというものです。こちらも安心してお話しできるわけですよ」

須原と名のる男は、この話しぶりでもわかるように、なかなか頭の鋭い男らしく見えた。細面の青ざめた顔をしている。小がらで力はなさそうだが、こういう男はおそろしく肝が太くて、かみそりのような切れ味を持っている場合が多い。年は三十五、六に見えた。

「わたしたちとおっしゃると?」

春泥もゆだんはしなかった。

「三人の仲間です。会社のようなものを作っているのです。そのうちひとりは女です。いずれお引き合わせしますよ」

「ここにおられるのですか」

「いや、ここはぼくひとりです。ここのマスターも別に知り合いじゃありません。ご心配には及びません」

「で、用件は?」

「われわれは、あなたの秘密も多少知っているのですから、こちらの秘密もある程度うちあけます。秘密はお互いに厳守するという約束でね」

「わかりました」

「実は、おり入ってお願いがあるのです。それについては、ぼくたちの会社の性質を説明しないとわかりませんが、これはぼくたちは妻にも恋人にもうちあけない、三人だけの絶対の秘密ですから、そのおつもりで。