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しそうとしてのぶんがく

思想としての文学

戸坂 潤

「思想としての文学」三笠書房、1936(昭和11)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,809 字 · 408 页

青空文庫

三

この意味で世界観では理論も芸術も一つになっている。両者の結合点を見出す為には先ずここまで帰って来れば好い。というのは、唯物論的世界観は、現実の最も正しい即ち客観的で一義的な反映以外の何ものでもないからである。――理論や芸術は、この同じ現実の同じく客観的で一義的な反映によって、初めて本当の――唯物論的な――理論や芸術となる。只その反映の仕方に、方法に、理論乃至科学と芸術乃至文学とで、類別があるだけだ。両者がその世界観からして異るとも考えられるのは、ただこの意味に於てだ。

三

では唯物論的理論(科学)の方法と唯物論的芸術(文学)の方法との間にはどういう根本的な類別があるか。というのは理論と芸術とはどこで違うかということである。こういう大きな歴史的にも沢山の経緯を持っている問題をここで簡単に片づける積りはないが、少なくとも次の点だけは指摘して置かなければならない。

最も大事なのは主題の完了性に就いての区別である。理論乃至科学の労作は、無論一定の客観的に要求された主題を選んで、之をあます処なく分析し統一するのであるが、併しそれによって主題自身が完了したということにはならぬ。