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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

二匹の鼠

二匹の鼠

今や、わしの前代未聞の大復讐計画は全く成ったのである。アア愉快愉快。愈々思いをはらす時期が近づいて来たぞ。「可愛さ余って憎さが百倍」という俗言がある。実にその通りじゃよ。わしは瑠璃子を、川村を、あれ程愛していたからこそ、信じていたからこそ、彼等に裏切られた憎しみは、その愛情に百倍するのだ。イヤ、千倍、万倍するのだ。

わしの立場は、例えば逃げ道のない袋小路へ、二匹の鼠を追いつめた猫の様なものだ。全身銀色の古猫じゃ。ウフフフフフフフ。皆さん、猫が鼠を殺す時の、残酷な遊戯をご存じじゃろう。わしは丁度あの猫の気持であった。

最後には、どの様な恐ろしい目にあわせてやるか、それは細い点までも、ちゃんと計画が出来上っていたが、直様そこへ持て行ったのでは、余りにあっけない。わしの恨みはそんなあっさりしたものではなかったのじゃ。

で、順序を追ってジワジワと楽しみながら復讐事業を進めて行くことにしたが、先ず第一着手として、為しとげねばならぬ三つの事柄があった。その一つは、川村義雄との交りを深くして、彼の心からの信頼を得ること、第二は川村の瑠璃子に対する情熱を陰に陽に煽り立て、わしが嘗つて瑠璃子に抱いていた以上の狂恋に溺れさせること、第三には、このわしがひそかに瑠璃子の心を捉え、瑠璃子を我物として置いて、最も適当な