轻松读懂日语经典作品
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
だが、わしはそれが嬉しかった。妻を娶って、親友の心が離れて行くかと案じたのは、杞憂に過ぎなかったのを知って、わしは大満足であった。
皆さん考えて見て下さい。この様な幸福が又と世にあるじゃろうか。
名誉ある爵位を持ち、家は富み、日本一の、少くもわしの目にはそう見えた美人を妻とし、その妻には愛され、親友には親しまれ、しかも、わしはまだ若かったのだ。これが人間最上の幸福でなくて何であろう。極楽世界でなくて何であろう。わしはあんまりよすぎて、いっそ勿体ない様な、空恐ろしい様な気持さえした。
あれはいつであったか、何でも結婚してから一年以上もたった時分だと思うが、川村と二人切で、例によって女について論じあっていた時、わしが一年以前とは、まるでうらはらに、女性を褒めそやすものだから、川村はたじたじとなって、何ぜか少し陰気な顔をしながら、
「君は本当に善人だよ」
と溜息をつかぬばかりの調子で云った。
何だか変に聞えたので、
「どうして、そんなことを云い出すのだ」
と尋ねると、
「少しも疑いということを知らぬからさ」
と、益々妙なことを云う。
「疑いといって、誰も疑う人がなければ仕方がないじゃないか」