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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
「アラ!」
と云って鈴の様な目を見はり、それから、くすぐったい様な表情で、唇を何とも云えぬ愛らしい恰好に曲げて、嫣然と微笑するのが癖であった。わしは、その微笑を見る為には、どんな大きな犠牲を払うことも辞さなかった。なぜと云って、瑠璃子の方でも、この上もなくわしを愛していたのだから。
わしの家は俄に賑やかになった。瑠璃子を喜ばせる為の、小宴が屡々行われ、知人という知人が招かれた。わしの妻はそういう席上で、美しい女王の様に振舞うのが好きであった。わしは又、それを見るのが好きであった。
中にも親友の川村はよく遊びに来た。彼は案内も乞わず、わしの家へ入って来る程親しかった。わしの家を我家の様にふるまった。瑠璃子とも大の仲よしで、三人鼎座して、罪もなく笑い興じる日が多かった。
流石に苦労した男丈けあって、川村は交際術にかけては、すばらしい腕前を持っていた。一度会ったばかりで、誰も彼も、彼に非常な親しみを感じる様に見えた。瑠璃子も例外ではなかった。川村は瑠璃子を喜ばせる術にかけては、確にわしよりも役者が一枚上であった。三人で話していても、川村と瑠璃子ばかり話がはずむ様なことも屡々あった。