轻松读懂日语经典作品
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
すると、アア有難い。棺の蓋がメリメリと破れる音がしたかと思うと、刃物の様な鋭い空気が、スーッと吹入って、冷たく頬に当った。アア、その空気の甘かったこと。
あんた方は、空気がどんなにおいしいものだかをご存じあるまい。わしの様な目に会って見ると、それがハッキリ分るのだ。
わしは鼻も口も一杯に開いて、肺臓に吸い込める丈け、そのうまい空気をむさぼり吸った。吸うに従って、身も心もシャンとして来た。本当に蘇生したという感じがした。
そこで、わしは板の割目に手をかけて、力まかせに、推し破った。今度はもう大して骨が折れぬ。とうとう棺の蓋をはねのけてしまった。
無論わしは棺の中から飛び出した。飛出すと同時に、何とも分らぬひどい地響きがして、わしの頭から、何か固いものがバラバラと降って来た。棺を飛び出した拍子にどうかして砂か小石でも落ちて来たのであろうと、わしはさして怪しまなんだが、あとで考えて見ると、このひどい音を立てて落ちて来たものが、わしの生涯に実に重大な関係を持っていたことが分った。それがなかったら、わしもこんな重罪犯人にならないで済んだかも知れない程の、一物であった。