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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

餓鬼道

そして、まるで子供の様に、一つ二つと算えながら、その袋を取出しては地面に積上げた。総計五十八個だ。しかもその上に、袋をのけた棺の底には、主として日本支那の夥しい紙幣の束が、まるで紙屑の様に押しこんであったではないか。

嬉しさに算えて見ると、日本の紙幣ばかりで三万いくらあった。支那紙幣、金銀珠玉を通計したら、恐らく百万円は下らぬであろう。

餓鬼道

併し、これは賊とは云え、他人の宝ではないか。大牟田子爵ともあろうものが、賊の盗みためた財産を横取りする訳には行かぬ。そうだ、警察へ知らせてやろう。海賊には恨まれるかも知れぬけれど、これ丈けの財宝を、徒らに埋もれさせて置くのは意味のないことだ。よしよし、それに極めた。

わしは自りで合点しながら、その警察へでも出頭する気か、フラフラと立上って、歩き出そうとした。そして、ハッと我に返った。

馬鹿奴、何を考えているのだ、警察どころか、一歩だって、この穴蔵から出ることは出来ぬではないか。

「金ならいくらでもやる。助けてくれ」

若しこれが人里離れた穴蔵でなかったら、一言叫びさえすれば、四方から救いの手が集まって来るだろう。