轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
十三、検察の妄執の事 並に朱唇綻ぶ事
「花ちゃん、おめでとう」
といった。
十三、検察の妄執の事
並に朱唇綻ぶ事
山王下から有明荘へつづく険しい小径を、今しも一種狷介な足調で上って行く黒ずくめの陰気な人物は、いうまでもない、警視庁捜査一課長真名古警視なのだ。
警保局の内訓によって松谷鶴子の自殺の証拠固めに其処へ赴こうとしていることは、すでに読者諸君も御存知であろう。松谷鶴子の死因が果して自殺であるか他殺であるか、風説はともかく事実のところはまだ判明していない。いずれ真名古課長の冷酷峻烈な取調べの結果にまつほかはないが、先刻帝国ホテルのロビイで林謹直がフト口を辷らした廉々を綜合してみると、今朝午前五時溜池署長から鶴子の怪死と皇帝検挙の件を報告されて以来、内務外務両大臣、警保局長、総督警視総監の四人が内大臣官邸に集まって鳩首謀議の末、急遽自殺の状況を整備してしまったものと思われる。
真名古は今その現場にやらされる。つまり、すっかり自殺の状況が出来上ったところへ自殺の証拠を探しに行くのである。何のために真名古警視がそこにやらされるかといえば、真名古の署名のある報告書が必要だからで、いわば真名古は警視庁から裏切られた上はなはだみじめな役目を果しに行くのである。