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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

総監は局長と慴然と眼を見合わせていたが、真名古の方に向き直ると、

「すると、つまりこうなんだな。皇帝はどういう目的か皇帝の秘宝を所持して日本に来られた。そのダイヤモンドがこの事件の枢軸をなしているので、鶴子の殺害事件も皇帝の誘拐事件も、みなそのダイヤモンドを奪う目的で行なわれたものだと思う外はない。要約すると、古市加十が有明荘を出ると間もなく、何者かがやって来て、どういう理由からか鶴子を窓から投げ落した上、料理場から皇帝をおびき出して階段の下で皇帝の意識を失わせ、それから、どこかへ連れ去った。鶴子が決して叫び声をあげなかった点、皇帝が易々と連れ出された点、また玄関の電鈴処置につづく外線の一本を切断して鍵を作り、必要のある時はいつでも外せるようにしてあったという点などから考え合わせると、犯人は皇帝をも鶴子をも熟知し、有明荘の地理にも充分通じていた者だということが判るから、犯人捜索の目標はこの辺に置いて間違いないように思う。そうだろうナ、真名古君」

「はっきりした事は申しあげられませんです」

この時電話のベルが鳴る。

総監は受話器を取って聞いていたが、送話口を手を蔽って局長の方へ振返り、