轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
という有名な古手問屋の商標がついていようという寸法。他は推して知るべし。貌に至ってはこれといって書き立てるがものはない。午砲時に仲之通に汗牛充棟するサラリーマン面の一種で、馬鹿には見えぬ代り決して優雅にも見えぬせせっこましい人相。但し、への字なりに強情らしく引結んだ唇は、何か磅たる気宇を示すように見える。といえば何か一と廉の人物らしく聞こえようが実はそんなのじゃなくって、これは「夕陽新聞」という四ページ新聞の雑報記者で古市加十という人物。読者においてもすでにお察しの如く、どんな鬱懐があったか知らぬが、罪もない月に喰ってかかるようでは、新聞記者の年季はまだまだ浅いものと見ねばなるまい。
この様な名前の新聞はついぞ我々の家庭には舞い込まぬから、御存じのない方もあろうが、新聞年鑑を見ると「夕陽新聞」というのは確かに存在することになっている。夕刊四ページ毎夕発行、日本橋の末広ビルの三階に本社があって副業に「化粧品新報」というのを発行している。もっともどちらが本職なのか判らない。評判によればこの新報の方が押売が利くので、本業より儲かるという評判だが、その詮索はここでは大して必要はあるまい。