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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

手筈で、尻尾を掴まれるような仕掛は一切しないことになっていた。……それに、それにどうして鶴が鳴いたんだろう。これで、また一つ不思議が増えた。……よし、並べて見よう。(愛想する筈もない笑子が愛想をする。――鳴く筈もない噴水の鶴が鳴く)……この二つの現象は一見何の関係もないようだが……しかし、ひょっとすると何か重大な繋りを持っているのかも知れぬ」

と上眼使いをしながらしきりに首を捻っていたが、間もなく諦めたように、

「いくら首を捻ったところで、どうせ俺の智慧じゃ及ばない。例の通り体当りで行く外はあるまい。最初にアタリをつけ、それから噴水の鶴を調べると、何とかこの連係が判るだろう。よし、そうと決まったらすぐ出かけよう」

と勢い込んで立上った途端、ホテルの支配人が入って来て、警保、欧亜の両局長がやって来たと告げる。加十は泣きッ面をしてがっくりと椅子の中へ落ち込み、

「ああ、忘れていた。俺は刑務所へ行くんだっけ。特種どころか、何もかもおさらばだ」

と呟くと、蚊の鳴くような声で支配人に、

「覚悟はいいといってくれたまえ」

まもなく二人の局長が入って来る。扉口で恭しく名乗をあげると、まず警保局長が進み出で全身これ恐縮といった身振りで、