轻松读懂日语经典作品
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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
言葉尻は嗄れたように喉に引っかかって、くッ、くッという嗚咽の声に変ってしまう。踏絵は畳の上に横坐りをして手の甲で眼をこすっていたが、支え切れなくなったと見えて両手の掌で顔を蔽うと、美しい指の間から涙があふれ出して来て筋になって肱の方へ伝わってゆく。
大部屋の方で濁声をあげる出雲節。哀切といいたいが、調子外れで、これがいかにも間抜けた節にきこえるので。
しばらくののち、踏絵は涙を拭うと、何とも形容のつかない淋しい笑顔をして、
「あたし、泣いちゃった」
といって、ペロリと赤い舌を出すと、ひどい恰好に足を組みかえ、
「そんな話、もう止しにしようや。いわなくてもわかっている。無事に添いとげたら新婚旅行に草津へでも行こうねえ」
山木は素直に頷いて、
「ああ、どこへでも行く」
踏絵はさりげないようすで山木の顔を見つめながら、
「山木、「お茶松」の抜け穴でとめ婆が絞め殺されていたよ」
山木は、えッと息をのんで、
「そ、そりゃ本当か」
「あの抜け穴は、有明荘ではわちきと岩井とお前だけしか知らないんだが、妙なこともあるもんだね。何か心当りがないか」
「冗、冗談。……しかし、えらい事になったもんだなあ。