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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

と、今にも卒中でも起しそうに、顔を紫色にしていきり立つが、一同は化石したようにウンともスンとも返事をするものがない。外務大臣はいよいよ激発して、

「諸君は死んだのか、眠っているのか。それとも、腹切りと覚悟をきめてしまったのか。眠っているのでなかったら何とか言い給え、何とか」

と阿修羅のように猛り狂っているところへ、警保局長が息せき切って飛び込んで来た。この寒空にしたたかに汗をかき、顔色さえ蒼ざめて見えるのは、またしても何か意外なる椿事が勃発したのだと察しられる。

警保局長の姿を見ると、一座はばね仕掛の鼠のように、一斉に椅子から飛び上り、

「どうした、どうした」

「局長、吉報か」

などと口々に喚きたてる。騒然たる有様になった。

警保局長は落ち込むように椅子に坐ると、ハンカチで額の汗を拭いながら、いわば気息奄々といった体で、

「吉報ならいいのですが、それが、またしても、どうも……」

と、このまま消えてしまいたいというように頭を抱えてしまった。

内務大臣は焦立って、

「またしてもどうしたんだ。早くいい給え、思い入れなんぞ後でもいい」

二人の次官もそばから詰め寄って、