轻松读懂日语经典作品
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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
こういっているところへ、丸腰の巡査が入って来て、縫子の花が面会に来たむねを告げる。これを聞くと真名古の表情にはなはだ不思議な変化が起きたのです。微笑ともひかりともいえるようなものが顔一面に拡がるように見えたのである。
巡査が出て行くと入れ違いに、花が保名狂乱といったような、艶美に取乱したようすで入って来ると、いきなり真名古の傍へ駆け寄って、
「真名古さん真名古さん、帝国ホテルに偽の王様がいます。いま、あそこにいるのはまるっきりちがう男です」
真名古は花の腕をとって椅子に落ちつかせ、
「どうしてその男が偽せものだとわかったのかね」
花は案外シッカリした調子で、
「どうしてって……、それはあたしにだけわかることなんです。そのわけはいえませんわ」
真名古は一向に驚くようすもない。花の傍を離れて送話器の方へ行きながら、
「と、すれば、それこそ本当の王様なんだ」
と呟く。しかし、これは花の耳には届かなかった。
真名古は送話器に口をあてて、低い声でホテルに繋げと命じた。それから、電話に出た主に、今王様はどうしている。これから逢いに行ってもいいか、ご都合を伺って見てくれといった。