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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

第十一回

三十四、フキヌケの窓の事 並に深夜の独白の事

意外な返事だった。王様は警保局長の命令で、日比谷署の留置場へ放り込まれてしまったというのである。

真名古は何とも言えぬ皮肉な微笑を浮かべながら、花に、ちょっと挨拶して、課長室から出て行った。

真名古が日比谷署の留置場へ行って見ると、そこに意外な事件が起っていた。何者かが留置場の鉄格子の窓を破って、王様を誘拐してしまったのである。

看視室の時計が寝ぼけたような音で午前二時を打った。午前四時までに、あますところ僅か二時間となった。このおさまりはどうなるのであろう。

第十一回

三十四、フキヌケの窓の事

並に深夜の独白の事

さて、真名古捜査課長が古市加十がぶち込まれたという監房の扉を引き開けて見ると、その中は藻抜けの殻。畳を起して見るほどの事はない、何しろ手狭なところだから、内部に人がいるかいないかぐらいのことはひと目でわかる。日比谷署は木骨コンクリートの、バラック同様なザッカケない建物だが、しかし、いやしくも留置場と名のつく以上、どこからでもやすやすと脱け出せるなんてことはない。では、どこから脱け出したのだろうと見廻すと、なるほど、監房の窓がバランバランになっている。