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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页

青空文庫

茄子殿を一体も、異なものでござりますけれど、親仁が神事じゃと申すので、位がつきまして、その、一体お生りなされた、などと見て来たものが申しますで、余り陽気違いじゃが。

一富士二鷹三茄子と申す儀もあり、むかし聖人の代には冬向き出来たものであろう、めでたい、と申す内に、御初穂を取りまして、お鶴ってその親仁の娘が。

はあ、はあ、旦那様も夫人も御存じ。あの鳩のような美い目をした、さよう。手前などへも、手の入ります時は、ちょいちょいお給仕の手伝いに参りますが、腕白でな。

その癖、熱海一という別嬪でござりますが、から野鳥でござりまして、よく御存じでいらっしゃらないで、悪く御串戯をなさるお客様は、目潰しの羽ばたきをされてお怒りなさります。またよく御承知の方は恐ろしく御贔屓で、あの娘の渾名が通りました、千鳥の一曲、所望じゃなどとおっしゃりまする。

それが、使ではるばる小田原の総鎮守、城の森のお宮まで、暮に持って行ったでござります。十四五里日帰りにいたしまして、へい、何、そのくらいの事は、あの娘にゃわけなしで、手前どもが朝飯を頂きます時分、もう真鶴を越して、お関所にかかりましたという話。