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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页

青空文庫

)

傲然としてしかも寂しく高らかに、

(はは、はは、はははは、)

(……………………)

(疾くせい。)

引返して扉をあけると、重い湯気は、娑婆へ返すように、どッと夫人を押出した。身の健かなる夫人は、かえって、かッと上気して眩暈を感じて、扉を閉めながら蹌踉いたが、ばらばら脱ぎ散らした上草履乱れた中に、良人のを見て、取って揃えて直しながら、袖にも襟にも、纏いついて消えもやらぬ霧のまま、急いで旧の欄干口。夫人がこのときの風采は、罪あるものを救うべく、疾めるものを癒すべく、雲に駕して往き還る神々しい姿であった。廊下を出ると、風が冷い。

誂えられたを調えて、再び良人の前に行った時、警部長は、天窓を掴むようにして、堅く卓子に突伏していた。

耳は掌で蔽うたが、気勢に、たちまち、蒼ざめた、顔を上げて、

(ここへ出せ。)

(は、)

と袖から卓子へ。

まだ持ったままだった巻莨を、ハタと床に擲つと、蒸気が宙で吸い消した。

椅子を引き寄せ、筆を取って、さらさらと認めたのが、ここに夫人の、お鶴にさとした文言であった。

書き果てると、著しく警部長の眉の顰むが見え、

(ああ、厭じゃ、が、黙っちゃおられん。