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わかむらさき
わか紫
泉 鏡花
「新小説 第十年第一卷」1905(明治38)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,708 字 · 75 页
」
とそのまましっかと抱きしめた。
膝なる俤、背なる髪、柳と梅としめやかに、濡れつつ、しばし密とせり。
「さ。」
手を取って、顔を上げさせ、右手の指環を凝視ながら、するりと抜いて、胸に垂れたるお鶴の指へ。
「私が祈ってあげるんだよ。
それからね、この手紙を、このままお前にあげるからね、大事にして、持って行って、その人に見せるんですよ。
ああ、構いません。私の落度になっても可いの、そのかわりね、心がおありだったら、どうぞ旦那の病気が直るように、お鶴さん、お前も念じて下さいな。」
お鶴は頭おもたげに、首垂れながら合点々々。
夫人も斉く頷いたが、
「まあ、盗賊の大将に、警部長の病気本復、私も愚痴になったわね。」
莞爾したが、目を拭い、
「どれ、ちゃんとして、手帳、鉛筆も。こうしていては目につきます。」
と、立たせて、胸に秘めさせた、手紙も持ち添え、しっかりと内懐へ入れさせて、我が前髪の触るるあたり、帯の皺をのしてやりつつ、
「そしてその人にいうんですよ、これこれのものがいいました。賊でも心があるだろう、お宝は盗んでも、こんな可愛い娘を盗んではなりませんと、可いかい。