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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
そこで祖母がまず折れて出た。そして祖父に言った。
「なあ、おとッつあん、あんなに言うのだからそうしてやったらどうだろう。あの子は生れた時えなを袈裟のように肩から胸にかけてぐるぐる搦みつけられていたが、あれゃあ坊さんになったらきっと出世するというしるしかも知れないよ」
そう言われると祖父もしばらく考えていたが、やがてとうとうこれも祖母の意見に従った。
「そう言えばそうだなあ。何にしても百姓なんかしているよりやずっと楽な生活ができるに違いない」
叔父が慧林寺の小僧となったのはそれから間もなくであった。慧林寺は武田信玄がどうとかしたという由来つきの有名な寺で、そこにはたくさんのお坊さんがいた。叔父はその寺から小学校に通いながらお坊さんの修業をした。そしてその和尚さんにことのほか可愛がられた。
が、叔父はもともと何か宗教的な感激や動機があってお坊さんを志願したのではなかった。この寺の他の坊さんと同様に、ただ、坊さんになればのらくらしていても楽に食って行けるといったように、ごく浅墓な考えからそうしたのだった。
だから、十六、七になってそろそろ性の悩みに襲われ始めた頃にはもう、僧侶としての自分の生活に疑いを抱き始めていた。