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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页

青空文庫

「とにかく殺生禁断はいい」主馬が酔ったような声で、「こういう家があり、いつでも安心して肉が食えるのは、あの法度のおかげだからね、……なにか云うんだ」

終りの言葉は、すばやい囁きであった。しかし半之助には、そういうはやわざは、できない。顔をしかめ、だめだ、というふうに手を振るので、主馬が慌てて、「ああ、あれは臍曲りだからね、曲軒という仇名があるくらいで、かれはなんにでも理屈をつける、なってないよ」

でたらめなことを云っていると、廊下に面した障子に、人の影がうつり、すっと障子があいた。

「――誰だ」

主馬が云った。

半之助も、盃を手にしたまま、ふり返った。廊下に男が立っていた。さっき庭で、射落された鷺を、蹴った男である、みじん流の剣術の達者で、次高来太とかいう、あの小男であった。

本当に酔っているのか、どうか、次高という男は、ふらふらしながら、いやな眼つきでこっちを睨んだ。

――どうする。

半之助は主馬を見た。

主馬は、任せろ、という眼まぜをし、黙って相手を見かえした。次高という男は、ゆっくりと手の甲で口を横に撫で、太くて濃い、短い眉をぴくっとさせながら、