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やまうらきよまろ
山浦清麿
吉川 英治
「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页
――刀を打つなら、御先祖様のような、お心になって打て。――鍛冶屋職人になる程なら、鍬を持って、土を耕した方が、どれほどましか知れぬぞ。――侍のたましいを打つ身は、侍以上のたましいでなくてはなるまいが)
と、骨休めにと、茶を入れて、宥わり慰めてくれる間も、母はそうした訓誡を、兄弟に対して、忘れなかった。
その後。
故あって、自分のみは、刀鍛冶を断念して、大石村の郷士庄屋長岡家へ、養子に行ってしまったものの――今も、母の訓えは、心にある、兄の鎚音は、耳にある。
そして、自分の当時の一心と。
こう三つのものの結晶が、この刀ではあるまいか。
(どんな物でも、斬れぬはずはない!)
彼の信念はそのまま、不動の体になって、刀は、静かに頭上へあがった。
――そして、ぐっと、下腹に、宇宙の気を呑むように力がはいる。
その丹田の力が、満身の気となって、ええいッと、一声の下に肱が下ろされようとした間髪――
『あっ、待った!』
と、箕兵衛直胤が、ふいに、声をかけて、彼の切先の前へ迫った。
――はっと思わず気を弛めると、直胤は、据物の古兜へ手をかけて、少しその位置を直した上、