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やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页

青空文庫

常々兄の真雄が又、一方ならぬ御庇護に預かっております由で』

『いや、そちの兄も、ぐんぐん腕が上って来てな。後援てしておるわしも、世話効いがあるというものよ。――時に、そちはもう、近頃では、刀も鍛つまいな』

『はい、養家先では、刀を鍛つなどという暇はおろか、刀を観るまもございません。庄屋の雑務やら養蚕やらで』

『百姓もいい。そちのような者が、庄屋の跡目を継いで励めば、あの辺の村々もずんと好くなるに違いない』

環は、ふと、淋しげな顔をして、

『近頃も、兄は相変らず、お宅様へは伺っておりますか』

『ム。稀に見えるが、今年はまだ、正月に鍛ち上げた此の刀を持って見えたきりじゃ』

『お。それは、兄の鍛えでございますか』

『見るがよい、懐しかろう』

『はい』――と、手を差し伸べかけたが、

『いや、止しましょう。刀を見ると、又、鍛冶小屋が恋しくなって、兄のように、自分も鎚を持ちたくなります』

『そちも、刀鍛冶が、好きとみえるな』

『兄は、上田の御城下に住む、河村寿隆の門に習び――私はその兄から、十三四歳の頃より、鎚の打ち方、重ね鉄の仕方、土取り、火入れまで教わりました』

『では今迄には、兄弟して、鍛った刀も多かろうな』