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やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页

青空文庫

よほど、責任を感じているとみえ、藩士たちは、無理に、彼の血を拭い、そして薬を塗りなどしていた。

『何うじゃな、怪我の容子は』

そこへ又、一人の組頭らしい藩士が加わって、心配顔に、内蔵吉へ直かに訊ねた。

塗の陣笠に、金箔摺の紋が、朝露に濡れていた。大きな口、濃い眉、そして滅多にない長面の人物である。年ごろは三十がらみとしか見えないが、烱々と光る眼が、むしろ底気味わるいほどだった。

『砲術調練中の過失じゃ。鳥打峠の岩鼻を的に狙撃しておった反れ弾が、射手の未熟のため、こんな所へ落下した。――許されよ。御浪士』

丁寧な謝罪なので、

『はっ』

と、内蔵吉は、思わず、大地へ手をついてしまった。いや何かそういう人物の、威圧に打たれた感じだった。

『幸に、傷が軽微で、此方も重畳じゃ。……歩行におさしつかえはないか』

『お案じ下されますな、さしたる事はございませぬ』

『どこかで、お見かけしたようだの。……はてな? ……拙者は、松代藩の学問所頭取、佐久間修理じゃが』

『あっ、では貴方様が、象山先生でございましたか』

『御浪士は?』

内蔵吉は、はっと、言葉につかえた。

蘭学、医学、海防、砲術、植林、化学と、あらゆる新時代の知識と、東洋の儒学とを併せて、今の時代的風潮の中に、巨人のように、諸藩からも仰がれている人が、正しく、礼儀をもって先に