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やまうらきよまろ
山浦清麿
吉川 英治
「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页
『はい』
『酒は好きか』
『好きです』
『酒だけにしては何うか』
『はい』
『貴様の瑕は、とかく、女子とのうわさが絶えんことだ』
『心得ております』
『心得ながらなぜ自誡せぬ。まだ、これからという分際で』
『女子の方からうるさく付き纒うのです』
『だまれ。莫迦』
『はい』
『――改めて、今日かように、そちの身持について申すのも、実は、其方に取って、大事な機会が参ったからじゃぞ』
と、誡めた後で、清音は、自分の吉事のように、次のような目企みがあることを、彼に告げた。
それは先刻帰った客の――加藤宅馬、松平舎人の二人が発案で、物置小屋の隠れたる名工、山浦内蔵助を世に出すために、武器講という会を立てようというのであった。
つまり山浦内蔵助作刀頒布会なのである。口数を百口として、酒井家は勿論、旗本仲間、各藩の有志に、刷物を廻して、会員を募ろう。額は一口三両とする、そしてその半額を前納してもらい、やがて、内蔵助が本格的な鍛冶小屋を持つ資金としておいたなら、彼の将来には、刮目するものがあるにちがいない。これは、隠れたる天才を世に送り出すものだ。同時に、少額な金で、すばらしい新刀が手に入れば、時節がら、武士の腰にも、精彩が加わろう。