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やまうらきよまろ
山浦清麿
吉川 英治
「講談倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,573 字 · 91 页
非人は、腹を抱えて笑った。程経てから又、そっと外から覗き込んで、
『あれ……ほんとに、死骸を抱いて寝ちまやがったぞ。酒くせの悪いやつもあるものだな』
と、呆れ顔を見あわせた。
一方は、
『起せ起せ』と、云ったが、
『まだ、空は暗い。浅右衛門様のお駕が見えてから、抓み出しゃあいいだろう。一両の宿賃だ。もうちっと、寝かしておいてやれ』
と、放っておいた。
辺りが白みかけると、山田浅右衛門と二、三名が来て、形の如く、死骸を土壇にすえた。ゆうべの酔っぱらい浪人は、いつのまにか、消えていた。浅右衛門は自身、鍛ち下ろしたばかりの新刀――清麿の弟子斎藤清人が鍛えた一口を試して、
『存外、斬れる』
と、評しながら、間もなく帰って行った。
正月の二日早々。
清人の所へ、山田浅右衛門の宅から、斬味を賞揚した礼状一通と、酒肴代とが届いた。
清人は、その手紙を持って、年始に歩いた。何処へ行っても、それが自慢だった。――ところがそれから一月も経ってから、彼は、お次から囁かれた。
『清人さん、あまり自慢し散らさない方がよう御座いますよ。お師匠様のお情も知らないで』
『ばかいえ。あの刀は、鋼卸しから研ぎ上まで、おれの手で鍛えたのだ』