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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

五人の全裸の美女は、そうして頭を寄せ合って、放射状に、長々と横たわっていた。彼女たちの胸から腹、そろえた二本の桃色の足が、それぞれ一枚の花弁となっていた。海底の人花であった。あるいは巨大な美しいヒトデであった。その人花は、谷間のもっと下のほうにも、二つほど咲いていた。それより底は、暗くて見えぬけれど、谷間のいたるところに、この巨大な人花が咲いているのではないかと想像された。

薄暗く青くよどんだ水底の、桃色の人花の美しさと恐ろしさは、比喩を絶するものがあった。それはデ・クィンジーのアヘンの夢であった。影男はどんな悪夢の中でも、これほど妖異な巨大な美を見たことがなかった。

黒ビロードの影男と二匹の人魚は、真上からその人花に向かって降下していった。そのとき、もっと別のギョッとするような巨大な長いものが、すぐ目の前を横切っていった。太さは二十センチに近く、長さは五メートルもあるニシキヘビであった。海中にこんな大きなヘビがすんでいるはずはない。いずれはこれも人工のものにちがいないのだが、美女の巨花を背景に、青黒い水中を、うろこをにぶい銀色に光らせて、ヘビがくねくねと身をよじらせながら横切っていく光景は、やはり胸おどる妖異であった。