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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
しかし、わたくしは、あれをごらん願ったあとで、必ずこのへやで種あかしをすることにしております。まやかしの暴利をむさぼらないことを知っていただきたいからです。わたくしとしましては、いまごらん願ったものが自慢なのですが、五十万円の売りものは、実はもっとほかにあるのです。これまでのまやかしの世界は、いわばお景物にすぎません。そのほんとうの売りものについては、あとでお話しいたします。そのまえに、わたくしの発明について、ちょっと自慢話をさせていただきたいのですが……」
「それはぼくも望むところですよ。あれが夢ではなくて、現実だったとすれば、どうしても種明かしが聞きたい。それでこそ満足するわけです。どうか、じゅうぶん自慢話をしてください」
影男は、かたわらの少女に、四杯めのブランデーをつがせて、またひじ掛けによりかかり、ほとんど寝そべった形になって、相手のちょびひげと赤いくちびるを見つめた。
「一口に申せば、パノラマの原理です。お客さまは日本でも明治時代に流行したパノラマ館というものをご存じでしょうか」
「残念ながら、見たことがありません。話に聞いているばかりです」