轻松读懂日语经典作品
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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
「実は、わたくしも大正生まれなので、明治時代のパノラマ館というものは見ておりません。物の本で読んでいるばかりです。それによりますと、十九世紀のフランス人が、あれを発明したのです。わたくしは偉大な発明の一つだと信じます。その発明者は、この現実の世界の中に、まったく別の世界を創造しようといたしました。演劇、映画なども別の世界を目の前に見せてくれるものにちがいありませんが、舞台の額縁の中やスクリーンの上だけが別世界で、たとえ見物席を暗くしても、そこに現実世界が残っているのですから、『おしばい』とか『絵そらごと』とかいう感じを払拭することができません。見物たちは心のすみで劇場なり映画館なりの見物席を意識しながら、舞台やスクリーンを見ているのです。そこに架空と現実の混淆があり、純粋に架空のリアルに徹することができません。そういう不純な現実面を完全に取りのぞいてしまおうとしたのが、パノラマ館の偉大な着想だったのです。
パノラマ館はガス・タンクのような円形の建物でした。入り口をはいると、暗いトンネルのような地下道があって、そこをくぐり抜けて階段を上がると、われわれの目から、この東京という現実の世界がまったく消えうせて、そこに別の一つの世界が出現します。