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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

こちらが気でも狂ったのではないか。恐ろしい夢を見ているのではないか。

「アハハハハハ」

突然、影男が笑いだした。ほかのふたりはギョッとして、その顔を見つめる。

「わかった。手品の種がわかったよ。鏡だ。鏡が四方にはりつめてあるんだ。いや、四方じゃない。ここは八角形のへやで、八方が鏡になっているんだ。だから、ほんものの女体の木は十本ぐらいで、あとは鏡に写ったその影なんだ。八面の鏡に反射し、逆反射するので、無限に遠くまでつづいているように見えるんだ。黒ビロードの見物もそのとおり、ほんものはわれわれ三人きりだが、それが八方の鏡に映って、あんなにおおぜいに見えるんだ。

地上世界の見せ物でこんなことをやれば、すぐに種がわかってしまうが、地底の洞窟という好条件がある。それに、照明が実にうまくできている。そこへもってきて、女ばかりでできた木の幹というずばぬけた着想だ。ひょいとここへいれられた見物は、どぎもを抜かれて、つい目もくらもうじゃないか」

手品の種がわかっても、目の前の不思議なながめは、少しも魅力を失わなかった。ともかくも、何十人というほんものの裸体の娘が、巨木の幹の代理をつとめているのだ。