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かげおとこ

影男

江戸川 乱歩

「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页

青空文庫

それからぼくは須原君の腹心の部下斎木に化けて殺人会社の一員となったので、恐るべき請負会社の過去の悪行の数々を調べあげることができた。

そこで、ぼくはきみたちふたりを、一挙に撲滅する計画をたてた。そして、その計画はみごとに成就したばかりか、まったくぼくの知らなかったこの地底魔境という思わぬ収穫さえあった」

明智が語り終わるころには、影男と須原は、そっと目くばせをして、少しずつ、少しずつ、あとじさりをはじめていた。もう三メートルも、明智とのあいだがひらいた。ふたりは、そうして、裸女の群衆の中へまじりこもうとしているかに見えた。

明智は、それを見ても、なぜか平然としていた。予期していたことだとでもいうように、見て見ぬふりをしていた。

「アッ、明智君、あいつら、逃げるつもりだぞッ」

中村警部がそばによって、明智の腕をつついた。だが、もうおそかった。ふたりの犯人は、群がる裸女の中に突入していた。白と、桃色と、キツネ色の肉団の密集の中を鏡の壁に近づこうとしていた。八人の黒衣が、それを追って、裸女の海を泳いだ。だが、なかなか近づくことはできない。もうピストルも物の役にたたなかった。