轻松读懂日语经典作品
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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
「面白倶楽部」1955(昭和30)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,133 字 · 310 页
そのとき、びっくりさせるように、電話のベルが鳴った。鮎沢はそこへ歩いていって受話器をとった。
「うん、おれだよ……なに、使いに出たまま、うちへ帰らないで、郊外へ郊外へと……わかった。どこまでもあとをつけるんだ。十分ごとに、電話のある家を見つけて、そこの人にここへ電話をかけさせろ。その家の位置がわかればいいのだ。用件はどうとでも作り出せる。あたりに家がなくなるまで、それをつづけるんだ。百姓家だって電話のある家がある。そこへ駆けていくんだ。相手は子どもの足だ。見失う心配はない。わかったな。じゃあ」
受話器をおくと、しかめていたまゆを急にひらいて、ニッコリと女を見た。
「なんだか別の事件があるらしいのね。鮎沢さんって忙しい人ね」
「いつでも十ぐらいの事件が継続中だ。忙しくなくっちゃ生きがいがないよ。今の電話は、善神をつとめるほうの事件だ。ぼくは悪神になる場合が多いが、善神にもなれるんだぜ。たとえば、きみに対しては、いつでも善神なんだからね」(軽い笑い)
「あたしだけに善神じゃなくて、たくさんの女の子にも、でしょう」(笑い)
その実、そのたくさんの女のひとりでも、彼女が知っているわけではなかった。