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しそうとしてのぶんがく

思想としての文学

戸坂 潤

「思想としての文学」三笠書房、1936(昭和11)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,809 字 · 408 页

青空文庫

だから世間ではこのモダーニズムの合言葉として、最も非人格的なスピーディ・朗らか・ナンセンスなどを選んだのである。

併し最も注意しなければならない点はモダーニズムと自然主義との関係だろう。日本の自然主義は決して自然科学的世界観や実証主義の故に採用されたのではなくて、文学意識を封建的な旧道徳意識から自由にしようとする文学本来の自由独立のために採用されたのであったから、今も云ったように、夫は初めから人道主義化されていて、単に本能や情念の文学上の勝利を意味するものでしかなかった。自然主義の台頭期に於ては、自然主義に賛成なものも反対なものも、自然主義の文学上のこの使命を充分尊重していたのであって、自然主義とは取りも直さず文学そのものの独立を意味するシンボルに他ならなかったようだ。で、そういうわけだから、日本の自然主義そのものからはフランスに於てのように科学主義も主知主義も社会観も出ては来なかった。モダーニズムは別で、こうした人道主義的自然主義の伝統(実は単にヒューマニズムと云ってもいいのだが)に対抗して、却って自然主義の本来の一根本要素であった機械主義を押し立てたわけなのである。