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しょうわゆうげきたい

昭和遊撃隊

平田 晋策

「少年倶楽部」1934(昭和9)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,452 字 · 208 页

青空文庫

大帝の御前に祈をささげ終った二人は、錨の印のついた自動車を走らせて目黒の岡に向った。大佐がハンドルをにぎっている。自動車はとある森かげの小さい邸の前にとまった。なつかしいわが家である。

灯のきえた邸の中は闇につつまれ、門前のあけびの葉がかさこそと音を立てた。

「お母さまは、おやすみらしいね。」

武田大佐は、清君の耳もとでささやいた。清君はだまって握拳をぎゅっとかためた。

――ああお母さま。おなつかしいお母さま。僕は、これから兄さんと一しょに戦場へ行ってまいります。生きて帰って来られるかどうかわかりません。お母さま。もし僕が太平洋の藻くずと消えても、きっときっとお恨み下さいますな。お母さま。僕は今、お母さまにお目にかからず、御門のそとから、こっそりとかくれて、お別をしているのです。――

清君は泣きたくなるのをこらえて、心の中で母上にお別をつげるのだった。

「さあ、行こう」。

やがて、武田大佐は清君をうながして、また闇の中をどこかへ走り去った。

その夜の明けがた、二人を乗せたモーター・ボートが、朝霧の中を観音崎の沖へきえた。その行方はわからない。

『富士』