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しょうわゆうげきたい
昭和遊撃隊
平田 晋策
「少年倶楽部」1934(昭和9)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,452 字 · 208 页
それは、今しも習志野原から、下志津原に向って、十八台の装甲自動車が、九十キロの快速力で、まっしぐらに走って来ているからだ。
先頭の自動車には、帝国大学教授の長岡博士が乗っている。生命がけの研究をつづけていたのにちがいない。髭がぼうぼうと生えて、眼がくぼんでいる。
戦線に近づくと自動車は散り散りになって、十二台は十二の大隊の塹壕の後へ進んで行った。残りの六台は、陣地の右翼の前の方にある松林のかげへ進んだ。
長岡博士は、自動車からとび下りると、すぐに立川中将のいる塹壕へ入って行った。
「立川君、やっと間にあいましたよ。」
博士の声は、かすれて、咽にひっかかった。
「長岡君、わしはお礼の言葉がないよ。」
中将はじっと博士の顔を見て、おごそかに敬礼をした。
「参謀長、長岡液を陣地の上へまけ!」
命令が下ると、装甲自動車から、うっすら赤い煙がはき出された。それが見る見る塹壕の隅から隅までひろがって、やがて霧のようにしとしとと兵士たちの体をぬらした。
これが長岡液だ。長岡博士は碧海島から送られた『最上』の戦死者の死骸をしらべて、フーラー毒ガスの正体をさぐり、その毒をふせぐ液をこしらえたのである。