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さいしゅうせんそうろん
最終戦争論・戦争史大観
石原 莞爾
石原莞爾『最終戦争論・戦争史大観』。同一底本的分册已合并为一书。收入:最終戦争論、戦争史大観。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,783 字 · 305 页
そこでモルトケ大将は、敵の攻撃に対しメッツ要塞を利用し、いわゆるニードの「袋」に敵を誘致して一撃を与え、主力はマース右翼の敵の背後に迫るような作戦を希望したものらしい。ある年の参謀旅行で、敵がロートリンゲンに突進して来るのに、作戦計画の如く主力をマース左岸に進めんとする専習員の案に対し、モルトケは「その必要はない。マース右岸の地区を敵の側背に迫るべきだ」と講評したとの事である。
しかし無力なモルトケが、断然シュリーフェン伝統の大迂回作戦を断念する勇気はあり得ない。参謀本部の空気がそれを許すべくもない。また実際モルトケもそこまで徹底した識見は無かったであろう。永年の伝統に捉われない自由さから、他の人々より持久戦争に対する予感は強かったのだが、さりとて次の時代を明確に把握する事も出来なかったろう。モルトケを特に凡庸の人というのではない。ナポレオンの如く、ヒットラーの如く特に幾億人の一人と云われる優れた人でなければ無理な事である。
一九一四年八月十八日頃のモルトケの煩悶はこの辺の事情を見透せば自ら解るではないか。敵は予期した通りロートリンゲンに侵入して来た。