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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

吉川英治『柳生月影抄 名作短編集(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:柳生月影抄、下頭橋由来、脚、べんがら炬燵、大谷刑部、鬼、春の雁、旗岡巡査、茶漬三略。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 页

青空文庫

「おば様、わたし、どうしたらいいでしょうね」

「どうしたらとは?」

「縁談があるんですの」

「結構じゃありませんか。――たとえ生きてお還りになるようなことがあっても、磋磯之介は、公儀のお尋ね人ですからね」

「けれど、どうしても、嫌なんですもの」

「誰方ですか。縁談の先は」

「繭仲買の専右衛門ですって」

「ま。――あの人?」

奥の書斎から咳声がきこえたと思うと、

「おかや、おかや」

「――はい」

彼女は、主人の書斎へ入った。そして、戻って来ると、声を密めた。

「お那珂さん、また主人が、あなたの声を聞いて、少し機嫌をわるくしているんですが」

「すみません。もう帰ります」

「気を悪くしないで下さい。良人でも、貴女の将来を思っているんですから」

「おばさま、分っておりますわ」

「今ちょっと、専右衛門さんとの縁談のことを耳に入れたら、あの男なら生涯を託しても慥かだろうといっていました。烏山の町では、堅いというので、いちばん信用のある人だし、商才もあるから、いい縁談だ。おまえからもすすめて上げろといわれましたけれど、こればかりはね」

「……もう当分伺いません。おばさま、さようなら」

「お提燈を持っていらっしゃいな」