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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

わしは川村の傍らのソファに腰を卸して、部屋の中をアチコチしていた一人のボーイをさし招いた。

「オイ、君は大牟田子爵を知っているだろうね。あの人はこのクラブの常連ではないのかね」

わしは、川村に聞える様に、大声で尋ねた。

「ハ、大牟田の御前様は、二月余り前、おなくなり遊ばしました。飛んだ御災難でございました」

ボーイはわしが当の大牟田子爵と知る由もなく、わしの死にざまを手短に話して聞かせた。

「フン、そうか。それは残念なことをした。わしは大牟田子爵とは子供の時分の馴染でね、あれと面会するのを楽しみにしていたのだが……」

聞えよがしに残念がって見せると、案の定川村の奴わしの手に乗って、見ていた雑誌を置き、わしの方に向直った。

「失礼ですが大牟田子爵のことでしたら、僕からお話申上げましょう。僕は子爵とは非常に親しくしていた川村というものです」

川村奴わしの顔をジロジロ見ながら、自己紹介をした。無論、わしの正体が見破られるものではない。奴のことだ、何となく裕福らしい紳士につき合って置いて損はないと考えたのであろう。

「そうですか。わしは二十年も日本を外に暮して、やっと昨日この地に帰って来た、里見重之と申すものです。