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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
その甲斐あって、今では川村はわしを実の父の様に思い、何もかも打開けてわしの意見を求め、はては悪い相談まで持ちかける程になった。
わし達は車を連ねて、よく料理屋へ行ったものだ。そこではいつも、土地の売れっ子芸者をすぐって、弾けよ歌えよの乱痴気騒ぎが始まった。呑み助の川村は、酔っぱらうと優しい顔に似げなき狂態を演じた。
わしはそのグデングデンに酔っぱらった川村をそそのかして、よく瑠璃子の住まいへ送ってやったものだ。女が酔っぱらいを好く筈はない。
瑠璃子の心は、この狂態を見せつけられる度毎に、川村から離れて行く様に見えた。
川村を離れてどこへ行く。云わずと知れたわしへ来るのじゃ。瑠璃子め、嘗ては嫌い抜いたこのわしを愛し始めたのじゃ。女の心程えたいの知れぬものはない。白髪白髯のこの親爺のどこがよくてか。云わずと知れた金である。栄耀栄華と一緒にこのわしの白髪頭までが尊く見えたのかも知れない。
「あなたは、年寄りだ年寄りだと、一人で老込んでいらっしゃいますけれど、お見受け申した所、決してそうでございませんわ。その艶々したお顔色、立派なご体格、まるで三十そこそこの青年でいらっしゃいますわ。