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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

理窟で、次に与える苦痛を、一層効果的にする手段に過ぎないのだ。お多福の面で引寄せて置いて、ガラリと鬼の面に変るという奴だ。

そこで、翌日わしは瑠璃子を訪ねて、叮嚀に詫言をした。

「昨日は実に申訳のない失策でした。余り不思議な代物を発見した珍らしさに、年甲斐もなくつい調子にのって、芝居がかりになってしまって、ひどい目に逢わせましたね。ただお話丈けにして、赤ん坊の死骸なんかお目にかけなければよかったのです。全く申訳ありません」

瑠璃子は、まだ幾分青ざめて、不安らしく目をキョトキョトさせていたが、わしの詫言を聞くと、

「イイエ、わたくしこそ、皆様をお騒がせして、本当にお恥かしいですわ。赤ん坊の死骸を見て目を廻すなんて、殿方にはさぞおかしかったでございましょうね。気が弱いものですから」

と弁解がましく答えた。この様子では、別にわしの所業を疑ってもいないらしい。

わしがあの別荘を買入れたのも、赤ん坊の死骸を瓶詰にして保存して置いたのも、偶然にしては少し変に違いないのだが、瑠璃子はわしを南米帰りの里見重之と信じ切っているので、まさかわしが彼等の秘密を知り、故意にあんなお芝居をやったとは気がつかぬのだ。