轻松读懂日语经典作品
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
わしはふと、恐ろしい夢でも見ている様な気持にならないではいられなかった。すると姦婦は、これも仲々のしれ者だ。まるで小娘の様に、パッと顔を赤らめて、消えも入り度い風情を見せ、
「マア、ご冗談を。あたし、あなたは女嫌いでいらっしゃると伺ってましたのに」
と、甘い鼻声で、云いにく相に云った。
「女嫌い? 成程わしは女嫌いです。この年まで妻というものを娶らなかった男です。併し、瑠璃さん、それはわしが異性に対して余りに贅沢であったからかも知れません。詰りわしの心に思っている様な女に、今まで一度も出会ったことがなかったのです。ところが、今度日本へ帰って、あなたという人を見てから、わしの気持は全く変ってしまった。わしは死んだ大牟田敏清をさえ羨んだ。まして、現にあんたの周囲に群がる若い紳士達を見ると、笑わないで下さい、わしは本当に嫉妬に耐えないのです。わしは何ぜあんたと同じ年頃に生れ合わさなんだかと、それが恨みです」
わしのお芝居は段々熱を帯びて行った。真から、この愛らしい女をかき口説いている様な、妙な気持になって行った。その相手が、今わしの前にさも初々しく恥らっている美女が、嘗てはわしの妻であったことが、わしの気持を一層変てこな気違いめいたものにした。