轻松读懂日语经典作品
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
瑠璃子は、目のふちを真赤にして(娼婦というものは、心にもなく顔赤らめる術を心得ているものだ)じっとうつむいていたが、わしの言葉が熱して来るに従って、彼女は何か総毛立つ様に身を震わせ、感激の面を上げて、わしを見上げた。
アア、彼女は泣いているのだ。彼女のまぶたには、水晶の様な涙の玉がつらなり、唇は感激にふるえ、何事をか云わんとして、言葉も出でぬ有様だ。実に至芸である。嘗ては彼女の夫であったわしも、瑠璃子がこれ程の名優であろうとは、少しも知らなんだ。
「あたし、こんな嬉しいことはありません。叶わぬこととは思いながら、あたし、それを夢見ていたんです。あなたの力強い腕に抱かれることを夢見ていたんです」
瑠璃子は名文句を吐きながら、熱い手を伸ばしてわしの手をとった。そして、いつか川村に対してした通りに、涙にぬれ輝く顔を仰向け、半開の赤い唇を震わせながら、わしの顔の真下に迫って来た。
わしは流石に狼狽しないではいられなかった。この仇敵と唇を交わさねばならぬとは、余りにも苦々しい事だ。わしは躊躇した。だが、次の瞬間には、接吻は何も愛情の印ばかりとは限らぬ、相手を侮辱し、弄んでやる積りなら少しも構わぬではないかと思い返した。